祝「組織開発の探究」発売!本づくりの航海記を大公開
<新刊のご案内「組織開発の探究 理論に学び、実践に活かす」中村和彦・中原淳 著 ダイヤモンド社刊>
いよいよ中村和彦先生・中原淳先生による大著「組織開発の探究」が出版されます。この本は、「組織開発とはなにか」「組織開発はどこから来て、どこへ向かうのか」 という深淵な問いに、日本を代表する組織開発の研究者である著者お二人が400ページ以上を費やして答えを探った、たぶん世界でも類を見ない知的冒険の大航海記です。
ここで、微力ながらライティングのお手伝いをさせていただいた私自身の「組織開発の探究」本のプチ航海記を語らせていただきたいと思います。
最初に私がこの本の打ち合わせに加わったのは2017年4月10日のこと。4月29日にヤフー本社で行われる1日講座【組織開発・ワンデイ集中講義@IN 東京】の講義内容を元に、ライターの私がざっくりと下書きして枠組みをつくり、その上に中村・中原先生に加筆いただく形で本にしていきましょう、という話でした。
【組織開発・ワンデイ集中講義@IN 東京】は300名の参加者を集めて大盛況。終了後は、いろんな方から「この内容を本にするなんて、大変ですね」と声を掛けられました。「ほんと、大変ですよー」なんて答えながらも、その時は内心、「なんとかなるだろう」と高をくくっていました。というのも、当日の講演では、中村、中原先生のお二人が実に軽やかに「組織開発」を語ってくださっていたので、私も楽勝で「分かったつもり」になっていたからです。それよりも、内容がとにかく衝撃的で最高に面白く、本づくりに関われると考えるだけで、ワクワク楽しみでなりませんでした。
どこが衝撃的だったのかって?私は、これまでライターとして「人材開発」や「キャリア」「組織マネジメント」に関する記事を書く仕事をちまちまと10年以上やってきまして、それなりにいろいろ分かったつもりになっていたのですよね。それなりに。
ところが、お二人の講義は「ごめん、井上さん、今まで言ってなかったけどね、実はどれもこれも全部、出所は同じ話だったんだよ」とマジックの種明かしをされてしまうような内容だったからです。衝撃を受けたと同時に、細かく気になっていたことの数々が一気に腑に落ちました。それはまるで、カーテンで覆い隠されていた窓の外の景色を初めて見せてもらって「あ、私がいたのはここだったのね」と分かるような、そんな新鮮な感覚だったのです。
しかし、しかーし、いざ執筆を始めてみると、そこはもう荒れ狂う大海原…。「なんて大変な仕事を受けてしまったんだー!」と、一気に大航海(=大後悔)時代に突入しました。そもそも、デューイ、フロイト、フッサール、モレノ、パールズ、レヴィン…?って、名前はなんとなく聞いたことあるといった程度で正直よく存じ上げない方々ばかり。ちょっと書いては「!#$%&@*☆?」となり、ネット検索しては、それらしい解説を見つけ、少し分かった気になってまた検索…という感じで、もう進まない進まない…。手漕ぎボートで太平洋を渡っているような状態でした。
少しでも組織開発への理解を深めようと、7月には中村先生の組織開発基礎講座にも参加させていただいたりしましたが、知識がない上に筆も遅い私の仕事は遅々として進まず、「出てくる人はなぜユダヤ人ばかりなんだ?」と気になって難破しかけたり(これは本書の中で解説があります)、マズローさんが妙に気になって変な方向へ漂流したりしていたので、なんとかかんとか「ざっくりした枠組み」をお渡しできたのは、2017年の10月末あたりだったかと思います。(今思うと、この漂流もまた楽しかった)
いよいよ、中村先生、中原先生による本格的な大航海が始まったのですが、ここで、私の手漕ぎボートでの航海は、まだ東京湾すら出ていなかったことを思い知らされることになります。お二人とも超お忙しいはずなのに、原稿はあっという間に一面の赤字で埋め尽くされていき、私がつくった「ざっくりとした枠組み」は跡形もなく消えてなくなりました。その後、編集の間杉さんが「やはり事例も欲しいね」とおっしゃるので(ナイス判断です!)急ぎ5社を取材して「組織開発ケーススタディ」を追加し、「組織開発の未来」について語る対談原稿を追加し、先生方は組織開発に関するありとあらゆる知見をこれでもかと詰め込み…とやっているうちに原稿は増えに増え、最終的には400ページ超の大著となりました。
お二人による執念の執筆、魂の赤字は校了まで続きました。三校あたりでもかなり赤かったようでしたから、編集の間杉さんは赤字の海で溺死寸前だったのではないかと想像します。脚注はたくさんあるし、研究者たちの似顔絵イラストを入れようとか、ものすごく複雑な年表みたいな関係図をおまけにつけようとか、無茶ぶりばかり(笑)の本で、私が編集者だったら…と思うと、ぞっとしますが、これも読者を思ってのこと。間杉さん、本当にお疲れ様でした。
結局、刊行まで1年半もかかってしまったわけですが、いよいよ本になって世に出るかと思うと感無量です。東京湾内をぐるぐるしていただけの私も、一読者としてちゃんと読み直し、知的な大航海を心穏やかに楽しみたいです。
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